地熱発電の試掘で

 

三井石油開発による、蘭越町蒸気噴出事故について

(赤字は住民説明会を受けての改定)


 2023年7月に噴出事故を起こした地熱発電の試掘場所は、松原農園から約10キロ。大雑把に言えば、札幌・テレビ塔からなら「手稲駅」「新さっぽろ駅」、皇居からなら「阿佐ヶ谷駅」、原爆ドームからなら「ひろでん楽々園(廿日市の直前)駅」くらいです。

 テレビで見ると確かにかなりの噴出ですが、山奥でのことで、街の多くの集落では影響はほぼありません。しかし、数百メートルの距離の別荘地(?)や農地に住まわれている方もおり、騒音や空気汚染の恐れから大きな影響を受けておられます。

 この時期には風といえば好天時の「海風」が中心ですので、近隣のスキー場などのリゾート地や風下に当たる東側の市街地などが影響を受けかねないのですが、このレベルではまず住民が「体感」することはないのでしょうし、メディアが「蘭越町」と言えば、それ以外の方はあまり深刻には受け止めていないのかな、と想像します。人というのは、どこかに「安心」を見つけて自分を「安全域」に安置してしまうものなのでしょう。


 ちなみに、松原農園からはまったく視認できない場所で、その影響も直接受ける位置ではありません。「よかった」などと言える状況ではないのですが、ご心配いただいた方々には「大丈夫です」とだけ、報告させていただきます。水系もはるかに違っておりますし、そもそも葡萄やアスパラガスの栽培はまったく「潅水」をしておらず、雨水だけの営農ですので影響を受けることはほぼ、ありえないのです。


 噴出物で河川が汚染されている恐れが出てきていますが、この辺りは山からの雪解け水が豊富で、小さな水系ごとに農業用水を引いているのでその影響を受ける農家は蘭越町全体から見れば決して多いわけではありません。しかし一部の集落を直撃したようなかっこうになっています。たまたま同じ水系に当たってしまった農家には知り合いもおり、頑張っている新規入植者や若者もいるわけで、その苦労たるや想像することもできません。

 ご存知の通り、蘭越町は稲作が盛んな地域。この時期に必要な水量はかなり多いようで、その地域ではしだいに稲の生育に影響が出ているようです。すでにかなりの日にちが経っている中、企業側の対応には「迅速」とはかなりかけ離れた印象を受けています。


 最終的には尻別川という大河に注いでおり、その川から取水している稲作農家もいるので影響が皆無とはならないのですが、水量的には桁外れなので水質基準に問題が出るわけではないでしょう。ただ、風評被害は結構尾を引くのではないかと感じています。(7月7日、農業用水への取水制限は解除されました。ただ、不安からか、一部の農家へのタンク車での配水は続いているそうです)


 これは、規模こそまだ遥かに小さいですが、福島原発に関わる農作物や漁獲物の風評被害・実害と根は同じと思っています。

専門家を表に出さず、企業と政治で抑え込むのならばその2の舞になるのだろうと。世間はそんなものを全く信頼しておりませんからね。

 大企業がどのような後始末をしてくれるのかは注視しなければなりませんが、原発同様、何かあった時のことはろくに考えずに経済活動に精を出しているという、この国の脆弱さをこんな身近に見ることに、ちょっと唖然としているところです。


追記


 7月10日、町内で住民向け説明会が開かれました。思いの外、農業用水などへの影響は軽減されているようですが、近くの観光地の沼に噴出した湯は流れ込んでいるようで、その解決にはまだ一ヶ月程度の時間がかかりそうです。三井石油開発からは影響の大きかった農家への補償は個別対応になるので明言できない、最終的な収束への確約などはありませんでした。町民から多くの意見が噴出し、決して両者の理解が進んだものにはなりませんでした。

 風評被害はすでにでていることを訴える関係者もおり、この解決は決して人任せにはできないということを強く感じた次第です。