2014年収穫ワイン

 

2014年収穫 ナイヤガラスパークリング醸造報告

 2014年は、新生・松原農園にとっては記念すべき最初の年です。ただ、よくあるワイナリーの設立と違うのは、それまでに20年近くも自前のブランドを維持してきたという事です。
 この年の第1目標は、今までのミュラー・トゥルガウの「再現」ですが、新しい試みもすることができました。それが「スパークリングワイン」造りです。今年は原料は、同じ後志の仁木町の石井農園から、購入しました。将来的には、蘭越町内での生産を計画しておりますが、それも今まで通りに「ゆっくり」進めるつもりです。

 このスパークリングは、伝統的な「瓶内2次醗酵」のプロセスで造られています。まず、原料調達からの流れを説明します。

 ミュラーの仕込みが一区切りついた10月初旬、契約していた石井農園を訪れ、その日の朝に収穫したばかりの葡萄を受け取りました。僅かに病気の形跡も見られましたが全体としては十分熟した良い葡萄でした。果汁糖度17.5度、ナイヤガラの品種としては上級のものでした。

⑴ ナイヤガラの「しぼり」
 この葡萄を、既存の製法と同じように発酵させたのですが、その搾汁(絞り)の過程で、ミュラーの仕込みで経験した上で考えていたある手法を取り入れてみました。
 ナイヤガラという品種は、「搾りにくいことで有名」な、この業界でも定評のある品種です。この品種には、今年、いろいろと試してみた「ホールパンチ」という手法(こちらのページで紹介しています)がいいのではないかと考え、その上で「足踏みスキンコンタクト」という、思いつきの段階をプラスしてみました。
 農家の常備している「巨大なバケツ」に400kgのナイヤガラ葡萄を投入し、それを「足で、柔らかく踏む」事で「少〜し、つぶす」のです。それを、炭酸ガスを注入しながら行うことで酸化を防ぎ、数時間静置します。それから今までのように「ホール・パンチ」で搾るのです。
 この方式で、ナイヤガラとしてはかなり優秀な「75%」という搾汁率を得られました。来年は、メインのミュラー・トゥルガウでもこのやり方で搾汁効率、果汁歩合のアップを狙ってみたいと思っています。

⑵一次発酵、二次醗酵
 一次発酵は、ごく普通に行います。香りの高い、上質のワインが得られました。気温も低い時期で、安価なプラスチックタンクを用いたのに、です。
 その後、いよいよ二次醗酵です。まず、凍結保存しておいたナイヤガラの果汁に酵母を添加して「ほんの少し」醗酵させます。その果汁を、出来上がったナイヤガラのワインに合流。そしてその「甘くて、目覚めたばかりの酵母を含んだワイン」を普通に、スパークリング用の耐圧瓶に充塡してゆきます。
 そして瓶詰めした「ワイン」を、「20℃」程度の状態で保管し、約3週間ほどで2次醗酵が完成です!

 なにせ、初めての試みなのでけっこう試行錯誤です。まず、大事な「ガス圧」(どのくらい、噴き出す力があるか…)調整です。これが少なすぎると「シュワ…」くらいしか泡が出ず、スパークリングワインらしくありません。高すぎると、はっきり言って、「吹きこぼれて」しまい、サービスの要を足しません。スパークリングワインの代名詞、「シャンパン」は、よく表彰台でのパフォーマンスで使われるように、かなり高いガス圧です。しかし、家庭で楽しむ場合、高い方がいいとは思えません。どこに狙いを定め、2次醗酵でちゃんとそれを再現する、そこら辺がノウハウなのでしょう。

⑶ 澱抜き(デゴルジュマン)
 醗酵終了すると、瓶の口に澱を集めて「澱抜き(デゴルジュマン)」するため、箱の中に「逆さまに」並べたあと、パレットに積み上げて一日一回、リフトで揺すって「ガチャン」と下ろし、これだけで動瓶(ルミアージュ)のかわりにしちゃいます…。つまり、一日一回、瓶を揺すって澱を瓶口に集めるのです。ある人から聞いたヒントでやってみましたが、「意外とうまくいきます…」
 この「ガチャン・ルミアージュ」は北海道の低温下で行うので、同時に「酒石」がしっかり出ました。ちょうど、澱の上に酒石が蓋をしたように…

 このあとの澱抜き(デゴルジュマン)。ただ単に「澱が邪魔だから」抜くのではなく、澱・酒石が瓶に残っていると、開栓したときに「すごく泡が立つ」のです。ちょうど天ぷらを揚げるときに放り込んだ素材から泡がドバッとでますよね?あれと同じようなことが起こります。その泡の量はけっこうすさまじく、「止まらない」ため、下手をするとワインのかなりの量があふれ出てしまうのです。
 で、快適にスパークリングワインを楽しむためには澱抜きは必須です。まあ、これが手間なために瓶内2次醗酵ははやらない、と言っていいのですが。
 2014ナイヤガラでは、澱抜きは真冬、2月の寒い時期に行いました。「寒い方が、泡立ちが悪いので作業が楽」な為ですが、「澱抜きは、リリース直前のほうが美味しい」との説もあるので、ここら辺は今年のワインの評判を聞きながら、来年に向けての課題です。
 
 最近は、零下30℃に澱を凍らせて、澱抜きをする手法が主流ですが、そんなやり方では「手間とお金がモッタイナイ(第一、設備投資がかかります)ので、「ずっと手抜き」の方法をとりました。

 逆さまの瓶をゆっくり水平にして、一気に王冠を抜きます。そして「すぐさま瓶を立て」、シャンパンストッパーで栓をします。その間1秒。

 泡とワインと澱と酒石が入り交じって噴き出しますが、それは大きな洗面器で受けておきます(別な機会に使用?)。減ったワインの分量は、貯蔵してあるナイヤガラの通常ワインで補います。そして、あらためて王冠をして(高いスパークリングワインでは、ここでコルク栓をして、針金を巻いちゃいますね。)ひとまず完成です。(やれやれ)

⑷甘口スパークリングへの挑戦
 あと、ナイヤガラというワインはけっこう「甘口」と相性が良く、なんとか甘口でも出したい、と思いいろいろ試作をくり返しました。
 瓶内2次醗酵での甘口スパークリングは、シャンパンなどでも有名ですから「どこが難しいの?」と思うかもしれませんが、これには「甘いリキュール」が必要になります。澱抜きをした後に補うワインに、「甘くてアルコール分の高いもの」を使えば、アルコール分も落とさず、(だから保存性も高い)甘口スパークリングを造れるわけです。
 しかし、そのやり方を使うと言うことは、「輸入の酒類を混和する」事になるので、けっこうハードルが高いのです。
 で、夏に出すはずの「甘口スパークリング」の製造方法は…

 夏のリリース時に、発表します!

 
できれば、写真やイラストを追加しますね…

 

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